2026.08.10
「社内に問題社員がいるため、解雇したい。」「社員を解雇したところ、弁護士から不当解雇だと主張する通知が届いた。」というようなご相談をよくお受けします。
仕事を真面目にしてくれない、職場の秩序を乱す、違法な行為をする、など、従業員を解雇するという重大な決断に至った理由は様々です。
ただ、就業規則等(労働協約、あるいは、就業規則及び労働協約が存在しない場合には個別契約も含みます。)に定める解雇事由に該当したとしても、それだけで「解雇」が認められるわけではないことはなく、労働契約法第16条は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定めています。
つまり、解雇が有効とされるためには、その解雇に、①客観的に合理的な理由があり②社会通念上相当であると認められる、ということが必要になるのです。
しかも、「解雇」と一口に言っても、実は、解雇にはいくつか種類が存在します。
それらは一般的に、普通解雇、懲戒解雇、整理解雇などと言われます。
これらは同じ「解雇」ではあるものの、その手続きや、有効性についての判断基準などが異なり、その選択を間違ってしまった場合、前述のとおり、労働契約法第16条によって解雇が無効とされ、私がこれまで取り扱ってきた案件に基づく経験によれば、結果として、数十万円~数百万円の金銭を支出しなければならなくなる、という事態も想定されますので注意が必要です。
今回は、普通解雇と懲戒解雇の違いについて簡単にご説明します。
1 普通解雇とは
普通解雇は、労働契約上の解約権の行使として行われる解雇です。具体的には、労働者の傷病による労務提供不能、能力不足、適格性の欠如などを理由とすることが多いものとなります。
2 懲戒解雇とは
懲戒解雇は、労働者の重大な職場秩序違反行為(企業秩序違反)に対して、制裁「罰」として行われる懲戒処分(訓告、出勤停止、減給など)の一種であり、懲戒処分の中で最も重い処分と位置づけられています。
そして、この懲戒処分は、就業規則等の定めに従ってのみ実施することができるとされています(逆に言えば、就業規則等に規定されていない事情を理由として、懲戒解雇はできない、ということです。)
3 両者の違い
2つの解雇の主な違いは、以下のとおりです(なお、就業規則等の内容にも左右されますので、以下の内容が全ての雇用主に当てはまるわけではありません。)。
4 このような普通解雇と懲戒解雇の違いから、その有効性の判断基準は異なり、懲戒解雇の効力の判断に際しては、普通解雇よりもより厳格な審査を受けることになるとされています。なお、一般社会においては、普通解雇と懲戒解雇が必ずしも明確に区別して使用されているとは限りません。しかし、裁判では、有効性の判断基準の違いから、懲戒解雇であれば無効であるが、普通解雇であれば有効と判断される場合もあり得ます。
つまり、懲戒解雇の方が、より厳格に、上記①②の要件を審査される、ということになり、ハードルが高くなるということです。
よって、就業規則等に規定されている懲戒解雇事由に該当するという場合であっても、直ちに懲戒解雇を選択するのではなく、より有効となりやすい普通解雇としての解雇を行うという選択も実務上あり得ます。
以上のとおり、従業員を解雇する場合には、普通解雇と懲戒解雇のメリット・デメリットをよくよく検討した上で結論を出すことが必要となります。
弁護士:彌田 晋介