2026.09.15
0 はじめに 令和6年5月17日、民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)が成立しました(同月24日公布)。 この法律は、父母の離婚等に直面する子の利益を確保するため、子の養育に関する父母の責務を明確化するとともに、親権・監護、養育費、親子交流、養子縁組、財産分与等に関する民法等の規定を見直すものとなっております。 この法律は、令和8年4月1日に施行されました。 本コラムでは、上記の改正のうち、いわゆる「共同親権制度の導入」について紹介します。
1 親権とは 親権には、身上監護権と財産管理権が含まれると解されています。 身上監護権には、子の身の回りの世話をすることや、子の教育や居所等に関する事項の決定をすること等が含まれ、財産管理権には、子の財産を管理することや、子を代理して契約を締結すること等が含まれています。 今回の法改正においては、この親権の内容自体は変更されておりません。
2 離婚後の親権制度の変更(いわゆる「共同親権」の導入)について 改正前民法第819条は、父母の離婚後は必ずその一方のみを親権者と定めなければならないとする、離婚後単独親権制度を採用していました。 これに対し、改正後民法第819条は、離婚後単独親権制度を見直し、父母が離婚するときは、その協議または裁判所の判断により、その双方または一方を親権者と定めることとしております。
3 共同親権導入の趣旨について 改正前民法においては、離婚後に、父母双方を親権者と定めることは例外なく一律に禁止されていました。 このような規定に対しては、従前、子の利益を確保するためには、父母双方が離婚後も適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことが望ましいという意見があり、改正後の民法においては、離婚後単独親権制度を見直し、父母の離婚後にも、その双方を親権者と定めるという選択肢を取ることを可能としました。
4 親権の定め方について(1)判断基準 離婚後の親権の在り方については、父母が協議をして定めるものとされており、父母間に意見対立がある場合は、裁判所が親権者を定めるという枠組みとなっています。 裁判所が親権者を定める場合には、改正後民法第819条7項により、「子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならない」とされております。 他方で、①父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき、②父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれの有無や、親権者を定める協議が調わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき、のいずれかに該当する場合や、①②以外でも父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認めるときは、父母の一方を親権者と定めなければならないとされています。
(2)法改正前に離婚が成立している場合 法改正前に離婚が成立し、単独親権が定められている場合であっても、法改正後に、親権者を父母双方に変更することは認められています。
5 親権の行使方法について(1)改正後民法は、親権を父母が共同して行うとしたうえで(改正後民法第824条の2第1項)、①父母の一方のみが親権者であるとき、②父母のうち、他の一方が親権を行うことができないとき、③子の利益のため急迫の事情があるとき、④監護及び教育に関する日常の行為をするときは、父母の一方が親権を単独で行うことができる旨を明文化しています。 なお、④の監護及び教育に関する日常の行為のうち、教育に関する事例として、法務省が示しているQ&A(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00377.html)には、以下のような例示が示されております。
【④に該当すると考えられるものの例(=父母が共同して親権を行う場合でも、一方の親が単独で行うことができる)】○ 就学時の健康診断の受診○ 学校給食に係る手続(給食費の納付、アレルギーに係る連絡等)○ 出欠の連絡、個々の教育活動(宿泊活動、水泳授業、その他の学校行事等)への参加の同意の意思表示○ 学校が行う教育相談への対応(家庭訪問、三者面談への出席等)、子の学校生活に関する照会
【該当しないと考えられるものの例(=父母が共同して親権を行う場合に、一方の親が単独で行うことができないもの)】○ 入学、退学、転学、留学、休学等手続(願書の提出、初年度や毎年の授業料の納付、退学に関する申請等)○ 就学校変更の申立て、就学校に関する意見聴取への応答、区域外就学の手続○ 特別支援学校への就学に関する意見聴取への応答○ 就学義務の猶予・免除に関する申請○ 出席停止の命令に関する意見聴取への応答○ 長期間の交換留学制度、ホームステイ制度への参加
(2)他方で、父母が共同して親権を行うべき事項に関して父母の意見が対立した場合には、改正後民法においては、家庭裁判所が、父母の一方を当該事項についての親権行使者と定めることができるものとしています(改正後民法第824条の2第3項)。
6 監護者指定、監護の分掌について(1)例えば、離婚後に父母の双方を親権者と定めた場合でも、父母が別居している場合等には、通常、父母の一方が同居して、子を養育することが想定されます。 父母のうちどちらが子を養育するかという点については、父母が協議をして決めることとなりますが、協議が調わない場合は、裁判所に、父母のいずれか一方を監護者として指定してもらうという方法があります(改正後民法第766条1項、2項)。
(2)また、離婚後の父母の間で、子の監護に関して役割分担を行いたいというケースもあるかと考えられますが、そのような場合には、監護の分掌(分担)について定めをすることができることとなっております(改正後民法第766条1項)。 監護の分掌とは、子の監護を父母が分担することであり、例えば、子の監護を担当する期間を分担することや、監護に関する事項の一部(例えば教育に関する事項など)を父母の一方に委ねることがこれに該当すると考えられています。
7 まとめ 令和8年4月1日に施行された改正後民法により、今回紹介した親権制度を含め、従来の枠組みが大きく変更されることとなりますので、注意が必要となります。
以 上
弁護士:小野 俊介
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